2022年5月11日水曜日

船の跡

 船の跡

■  「花さそふ」の歌の本歌として次の歌の記述があった。
  • 【本歌】沙弥満誓「万葉」(訓は類聚古集による)
  • 世の中を何にたとへん朝ぼらけ漕ぎゆく舟の跡なきがごと
■ この歌は、リービ英雄が英訳していて、知っていた。
■ いわば人生哲学といった内容で、
■ 本歌とするにはちょっと異論がありそうだ。
  • 世の中に 言葉と文字がある限り どこかに何か 跡も残らむ   遊水
  • 世の人の 記憶の どこに残るのか 我去り行けば それも意味なく
■ 万葉集・巻三 351
  • [歌番号] 03/0351
  • [題詞] 沙弥満誓歌一首
  • [原文] 世間乎 何物尓将譬 <旦>開 榜去師船之 跡無如
  • [訓読] 世間を何に譬へむ朝開き漕ぎ去にし船の跡なきごとし
  • [仮名] よのなかを なににたとへむ あさびらき こぎいにしふねの あとなきごとし
■ 伊藤博・校注・万葉集に
  • 「唐詩に船過ぎて浪に痕無し(宋之間)などがある」
■ とあるので一応検索したがうまく調べられなかった。
■ 手元の唐詩選に宋之間の他の歌は幾つか見られたが、見当たらなかった。
■ こんな歌はある。
■ さて、・・・
  • 花さそふ比良の山風ふきにけり漕ぎゆく舟のあと見ゆるまで   後鳥羽院宮内卿
  • 船過ぎて 水に跡なく なりし後 風に誘われ 散る桜かな   遊水