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これらは私にとっていわば原点で、読み返し、五七五のもつ簡潔な表現形式への尽きない興味と、三十一文字の伸びやかな形を改めて思う。
ぼくはこうして古典と遊んでいる
まとめ
これらは私にとっていわば原点で、読み返し、五七五のもつ簡潔な表現形式への尽きない興味と、三十一文字の伸びやかな形を改めて思う。
□ あけぼのや細くたなびく春の雲
□ 闇もなお蛍ほのかにうち光り
□ ふたつみつ秋は夕暮れからすかな
□ あわれなり日の入り果ててすだく虫
□ 冬なれば身の引き締まる朝が好き
□ うらうらと正月晴れて祝いけり
□ 大きなるカメに挿したる桜かな
□ カッコウや木々若やかに青みたり
□ 子雀にこころときめき育てけり
□ 栞あり過ぎにし方の恋しけれ
□ 起きて水こころゆくまで飲みにけり
□ 涼しげにホワイトジーンズ穿きにけり
□ 朝顔の露落ちぬ間に起きにけり
□ よきひとと寝たるなごりの朝寝かな
□ 春雨や愁いに似たる梨花一枝
□ 五月晴れ、しく月のなき節句かな
□ かき氷銀の器に出されけり
□ 形よく苺食いたる乙女かな
□ みのむしやちちよちちよとはかなげに
□ 霜枯れにりんどうの花際立てり
□ 朝露に薄の穂先蘇枋にて
□ 空凍てて底より響く鐘の音
□ 粉雪の風にたぐいて入り来る
□ 村雨に池の蓮の心地よし
□ つれづれに一人碁を打つ冬日かな
□ 青磁器に清く冬日の差し入りて
□ 雀の子ねず鳴きすれば踊り来る
□ 雪月花、夏秋冬とめぐり来て
□ 梅の香の時にぞ人を想いけり
□ 夏の川、玉と散らして馬渡る
□ 夏の日の茜の雲のうすれゆく
□ 春夏とただ過ぎにすぎ落ち葉かな
□ 立冬や真白き紙に慰みて
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◇ 宵闇に香りをききし梅の園
□ 君知るやまだ春ならぬ我が心
◇ 谷あいに白く咲き散るこぶしかな
◇ 春うららにわとり垣を飛び越えり
◇ 犬吠えて行商来たる日永かな
◇ 春誘う岸辺を行きて君の家
◇ 鳥啼いて耳より覚めし春の朝
◇ まどろみて春の嵐の去りし朝
□ 山を背に旅立つ春の川の音
◇ りんご園花に愁いの淡き紅
□ 緋牡丹は惜しまず雨に咲きにけり
□ ためらわず手折れよ花の咲き初めに
□ 風に散るひとひらごとに春は行く
◇ 雲染めて夏の日落ちる彼方かな
□ 五月雨に満ち来る潮のはやさかな
□ 苗植えて足跡残る水田かな
◇ 潮引いて岸に傾く舟二艘
□ 釣り船に眠りたゆたい葦の瀬に
□ 麦畑、風さわやかに波となる
◇ 薬草を山に求めて霧深し
◇ 姿なき深山の声の響きかな
□ 静かなり山に向かいて今日もまた
□ 玻璃の中ただ氷片の置かれおり
□ 夕陽追い馬駆け登る高みかな
□ 人はなく稲の穂揺れて田舎道
□ 友去りて川面に揺れる月の影
□ ともに見し月は去年に似たるかな
□ 夕焼けの光吸い込む秋の山
□ 夕もやのとぎれとぎれに秋の木々
□ 落ち葉踏み登り下りのもの想い
□ 漁り火にもえる紅葉や鐘の音
□ 照る紅葉二月の梅に勝りけり
◇ 空澄みて蜜柑たわわに実る頃
□ 月明かり雪にはあらぬ蕎麦の花
□ 紅葉する山湯に聞くや川の音
□ 秋霖に十歳を想う夜半かな
◇ 松かさの落ちて寝返る夜長かな
□ 火を焚いて琥珀の酒を交わすべし
◇ 雪の中小舟がひとつ魚釣る
□ 雪国に訪ねて逢わず帰りけり
□ 廃屋に時はめぐりて梅の花
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□ 連山に初雪降りて空青し
□ 夢も果て鏡の中の白髪かな
◇ 入相の河口かすめる春の暮
□ 僧一人寺さし帰る影法師
◇ 日は落ちてなお岸辺ゆく花の下
□ 松が根を枕に天の高さかな
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□ 菜畑にもつれて消えた紋黄蝶
□ 菜の花や魚売り来る人のあり
◇ 春惜しむそぞろ歩きの堤かな
□ 夜半鐘声客船に到る秋の旅
◇ 夏草や栄華の跡の石ありて
◇ 我が傷を季節と城が癒しけり
□ 秋風に恋路海岸一人旅
注、半数を網掛けで消した。◇印は後日「漢詩に遊ぶ2」又は「漢詩に遊ぶ4」で再度取り上げた。