2025年8月20日水曜日

清少納言は、ホンマに勝ったのか

■ 2025-08-20
■ 百人一首の清少納言の歌で、「行成の申し出をきっぱり拒絶したということだ。」即ち、この勝負、清少納言の勝ち、というのがおおかたの評価のようだ。
■ ホンマかいな、枕草子をちゃんと読んだのかと思う。
■ 清少納言は、319段にもあるように、史記に接する機会はあった。

孟嘗君 姓は田
田文夜半到達函谷關,關法有宵禁,規定要日出才開門,但時辰未到。
幸好門客中有人會假裝雞鳴,於是群雞齊鳴。
衛兵以為天亮了,於是打開關口,田文一行人便乘機出關。

■ 孟嘗君は、つまらん特技かもしれない、鶏の鳴き真似が上手い者も雇っていたので、夜は開かない函谷関の門を、鳴きまねで朝が来たと思わせて開かせ、逃げおおせることができた。
■ こんな故事の知識があったので、行成とのやりとりに
  • 夜をこめて鳥のそら音ははかるとも世に逢坂の関はゆるさじ  清少納言
■ と歌を詠みかえした。
■ よく知られている。
■ ところが、このあと
  • 逢坂は人越えやすき関なれば鳥鳴かぬにもあけて待つとか  行成
■ と返されている。
■ そもそも、「しるもしらぬも逢坂の関」なのだから「逢う」ということですなあ、と返り討ちになって、清少納言はこの歌に「返しもえせずなりにき」と敗北を認め「いとわろし」と書いている。
■ この段は、歌のやり取りもさりながら、行成は、当代の能書家として三蹟の一人に数えられるほど書が上手く、このときのやりとりの手紙は「いみじゅう額をさへつきて、とり給ひてき」即ち、床に額をつけるほどに懇願されて、人に渡してしまった、というような、いわば、人気のある人との親しみのある話だ。
■ 紫式部が清少納言は嫌いだなどと書いているからといって同調するのもどうかと思う。
■ この段をよく読めば、清少納言の良さがよく分かる。